突然お手紙を差し上げる無礼をお許しください。
私たちは京都府立植物園を大切に思い、植物園・府立大学を含む京都北山エリアの自然を愛する
「京都府立植物園整備計画の見直しを求める会(なからぎの森の会)」の住民・府民です。
すでにご承知のように、京都府は昨年末に「北山エリア整備基本計画」を発表しました。
本計画につきましては、かねてより地域住民、植物園の歴代園長をはじめとする園芸・植物関係者、
府立大学関係者から多くの問題点が指摘されています。
また、現時点で京都府に提出された計画の見直しを求める署名は10万筆を超え、
さらに先般開催された京都府による住民説明会でも、圧倒的に多数の反対意見が表明されました。
とりわけ植物園に関しては京都府内のみならず全国より高い関心が寄せられ、
度々報道等で大きくとりあげられるようになっております。
そのような中、植物園の南側の府立大学の敷地に建設が計画されているアリーナにつきましても数々の疑問点が指摘され、
強引な京都府の進め方に対してはハンナリーズを愛するファンからも懸念が示される状況になっています。
私たちが問題にしておりますのは、アリーナが学生のための施設ではなく、むしろ学習環境を圧迫する恐れがあるという点と、
アリーナ経営を支えるための北山エリア一帯の商業開発が植物園を含む北山エリアの環境の荒廃を
招く可能性が極めて高いという点です。
ハンナリーズをご支援の皆様におかれましても、現在の状況を理解されることがとても重要であると思われますので、
ここに情報を共有させていただきたくペンを執った次第です。
現段階で指摘されている主な疑問点や懸念は次の通りです。
とりわけ、「大学構内に一万人規模のアリーナは必要なのか?」という疑問に関して、
にわかにハンナリーズの新Bリーグ加入条件に注目が集まり、北山エリア整備基本計画の主な目的が
アリーナ建設であることが明らかになってまいりました。住民説明会でも「京都府はハンナリーズと
すでに話をしているのではないか?」との疑問がありましたが、京都府は「何も決まっていない」と回答し、
懸念の払拭に躍起となる場面がみられました。
ハンナリーズが新Bリーグ加入のために今おかれている状況は周知のことと思いますので詳細は省きますが、
以下に新Bリーグのホームページから加入基準を整理します。新Bリーグ入会基準のうち、
新B1ライセンスでは売上基準が12億円に引き上げられるとともに、新設アリーナ基準ではハード面
(常設の貴賓席・スイートルームなど)、ソフト面(試合日設定など)の両方において現行基準にない項目が設けられます。
また、現行制度ではライセンス基準に含まれていない入場者数基準が新たに設けられます。
このような規定に加えて、年間40試合程度のハンナリーズ対戦試合の日程、曜日、開催時間なども現行より柔軟に決められるようになり、
新設アリーナの審査基準では「対象シーズン2年前にカーディング設定可能な109日の確保」が求められ、
Bリーグ最優先のアリーナであることが求められます。また仮にハンナリーズのホームアリーナとなれば練習での使用も想定されます。
一方、本アリーナ計画はもともと府立大学の体育館の耐震性不足から体育館を建替えるものとされ、
プロスポーツイベントとの共用のため授業やクラブ活動に影響が及ぶことを懸念する声に対しては、
「大学最優先です」との説明が京都府によりなされてきました。しかし、この説明は新Bリーグ加入基準である
Bリーグ最優先のアリーナであることと大きく矛盾しております。
これに関して先行する事例では、サンロッカーズ渋谷がB1リーグでスタートするにあたり、
体育館「青山学院記念館」を提供した東京の青山学院大学が参考になります。
青山学院大学では土日にBリーグヘ大学体育館を貸している間は学生の活動場所がないため、
渋谷区と大学の学生生活部が協力して近隣施設や相模原キャンパスなど代わりに使用できる場所を確保する必要が生じています。
学長はweb記事中で代替場所の使用料やそこまでの学生の移動費などの負担についても述べており、
実際の運用にあたってはBリーグの活動が優先され、学生はその合間に活動する形となり、
学生優先とはかけ離れた実態であることが明らかになっています。
また先般の住民説明会では、キャンパスが開かれ過ぎることによる防犯上の懸念が府立大学生や保護者から複数出されました。
府立大学キャンパスでは現在でもすでに盗撮被害が発生しております。
酒類の提供も伴うアリーナでのイベント参加のために、不特定多数が構内を自由に出入りすることによって起こりうる
性犯罪等への不安は、誠に憂慮すべき問題であると思います。
また、京都府は「北山エリア整備基本計画」において、各施設の連続性や連携による相乗効果を繰り返し強調し、
エリア全体の整備の方向性を「施設の枠を越えて人が自由に往来できる空間づくり」としています。
その中で植物園はエリア全体の回遊性を高める動線構想の中心に位置付けられており、さらにコンサル会社KPMGが作成した
アリーナ建設の資料がスポーツ庁のスタジアム・アリーナ改革推進事業の先進事例として紹介されていることから、
アリーナの建設と植物園を含む周囲の商業開発は一体であり、切り離して構想できないものです。
京都府立植物園は1924年に開園された歴史ある公立植物園です。
園の職員は高い栽培技術を基に貴重な植物の展示を実現して、一般市民の学習に資するだけでなく、
約300種の絶滅危惧種の育成や遺伝子の保存という生物多様性の維持の面において非常に重要な役割を担っております。
しかし、京都府の計画はその役割の心臓部であるバックヤードの機能を低下させるものであり、
商業施設の建設によって物理的に木々が伐採されるだけでなく、周遊性の高さやオープンな空間という構想から予測できる事態は、
大勢の人々が往来することによって起こる踏圧による植物環境の荒廃です。
その他に、照明の影響や貴重な植物の盗掘など多くの問題をはらんでいますが、
京都府はそれについて一切説明を果たしておりません。
山城盆地古来の植生を保持する「なからぎの森」や貴重な植物を有する園内を商業開発によって破壊することは、
SDGsの観点からも時代に著しく逆行していると言わざるをえません。
また、エリア整備はPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ:公民連携)で行われる予定にされていますが、
京都府が未だ建設費用の概算すら示さないことなどからみて、アリーナには包括的民間委託が想定されます。
しかし、包括的民間委託に限らず、民間企業が儲けにつながらない投資を行うことはありません。
商業利用以外の共用部分が極端に安っぽくなり、大学の利用に制限がかけられ、採算が採れない場合の税金からの補填、
業者が撤退した場合の不良資産化もあり得ないことではありません。北山エリア整備基本計画のなかで、
植物園の展示スペースが商業施設で削られ、バラ園や大芝生地が常設のイベント会場に転換されている背景には、
少しでもアリーナの採算を良くしたいとの考えが透けて見えます。そして、アリーナが不良資産化し、
ただでさえ厳しい京都府の財政が圧迫されるような事態に陥れば、最悪の場合は府有資産の売却等にもつながりかねず、
困るのは誰よりも府民であり学生であると思います。
以上のとおり、北山エリア整備基本計画はハンナリーズの新Bリーグ加入基準のクリアを前提とした
アリーナ建設が中心の計画であること、その中で
ハンナリーズをご支援の皆様におかれましては、以上の点をよく検討の上で賢明にご対応くださいますようお願いいたします。
また、海外の植物園に京都府立植物園の危機的状況について知らせましたところ、昨年11月30日にスウェーデンの
ヨーテボリ植物園園長より別紙のような憂慮を表すメールが京都府知事あてに届けられましたことも申し添えます。
なお、ご不明の点などあれば、どうぞご遠慮なくお問い合わせください。現地視察のご希望があれば、喜んでご案内します。
最後になりましたが、御社の益々の御発展と皆様のご健勝をお祈りいたします。
2022年2月13日
京都府立植物園整備計画の見直しを求める会(なからぎの森の会)
1.大学構内に一万人規模のアリーナは必要なのか?
2.教育研究の場である大学構内にプロスポーツが最優先される施設が建設されることの矛盾と治安悪化の危険性
3.アリーナの前庭となりイベント会場と化す植物園の荒廃
・京都府が説明する「大学最優先」と、Bリーグ加入基準が求める「Bリーグ最優先」が矛盾すること
・静かな環境が必要な文教ゾーンが著しく商業化して変質することへの懸念
・アリーナと一体の商業開発により植物園の緑地が削られて恒常的なイベント会場になるおそれ
・PPPによる整備の結果、将来的な不良資産化のおそれ
といった問題があり、このまま京都府により計画が強引に推し進められれば、
このアリーナを本拠地とする立場上、ハンナリーズが批判の的となる事態も予想され、
クラブ・選手へのプレッシャーやスポンサー企業への影響も予想されます。
敬 具
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